004 なんかグラグラする!



 ちゃ〜坊が、ロッドを両手で持って何かをしている。

ちゃ〜坊
「みなとじい〜!」

みなとじい
「今度は何だ?」

ちゃ〜坊
「これ、壊れてる!」

みなとじい
「何が?」

ちゃ〜坊
「リール!」

 ロッドを差し出した。

 みなとじいがリールをつかんで、軽く左右に動かす。

 カタカタ。

みなとじい
「緩んでるな」

ちゃ〜坊
「だから壊れてるんでしょ?」

みなとじい
「締めれば?」

ちゃ〜坊
「…………」

 クルクル。

 ギュッ。

 ちゃ〜坊が、もう一度リールを動かす。

ちゃ〜坊
「あ、直った」

みなとじい
「修理完了だな」

ちゃ〜坊
「ボクでも直せた!」

みなとじい
「壊れてなかったからな」

 ロッドには、リールを取り付けるための場所がある。

 その部分をリールシートという。

ちゃ〜坊
「リールのイス?」

みなとじい
「まあ、座る場所みたいなもんだな」

ちゃ〜坊
「じゃあ、このリールは座り方が悪かったの?」

みなとじい
「おまえがちゃんと座らせなかったんだよ」

 リールには、ロッドへ取り付けるための脚がある。

 その脚を両側から押さえて、動かないように固定する。

 ただそれだけの部品に見える。

ちゃ〜坊
「簡単じゃん」

みなとじい
「そうだな」

ちゃ〜坊
「じゃあ今日は終わり?」

みなとじい
「早いな」

ちゃ〜坊
「だって、リールを付けるだけでしょ?」

みなとじい
「じゃあ、そのリール外して、こっちを付けてみろ」

 別のリールを渡された。

ちゃ〜坊
「はいはい」

 リールの脚を入れて、締め込む。

 クルクル……。

ちゃ〜坊
「…………」

 さらに締める。

 クルクル……。

ちゃ〜坊
「あれ?」

みなとじい
「どうした?」

ちゃ〜坊
「さっきと感じが違う」

 リールの脚は、すべてが同じ大きさ、同じ形とは限らない。

 長さや幅、厚みなどに違いがある。

 そして、それを受け止めるリールシートにも大きさや形の違いがある。

ちゃ〜坊
「リールなら、何でも付くんじゃないの?」

みなとじい
「付くことは多い」

ちゃ〜坊
「じゃあいいじゃん」

みなとじい
「ちゃんと固定できればな」

ちゃ〜坊
「……また条件が付いた(^^;」

 ロッドとリール。

 別々に見れば、どちらも気に入っている。

 でも組み合わせたときに、しっかり固定できなかったら困る。

 釣っている途中でリールがグラグラする。

 締め直す。

 しばらくすると、また緩む。

ちゃ〜坊
「うわ〜。それイヤだな〜」

みなとじい
「魚が掛かってるときだったら?」

ちゃ〜坊
「もっとイヤ!」

みなとじい
「だから、買う前に組み合わせて確認できるなら、そのほうがいい」

ちゃ〜坊
「ロッドだけ見ちゃダメなんだ」

みなとじい
「実際にはリールを付けて使うからな」

ちゃ〜坊
「でもさ、ちゃんと固定できれば、それでいいんでしょ?」

みなとじい
「どうかな」

ちゃ〜坊
「まだあるの〜?(^^;」

みなとじい
「ロッドを持ってみろ」

 ちゃ〜坊が握る。

みなとじい
「そのまま釣りをしてるつもりで動かしてみろ」

ちゃ〜坊
「こう?」

 ロッドを動かす。

みなとじい
「手はどこに当たってる?」

ちゃ〜坊
「手?」

 今度は、自分の握っているところを見た。

 指。

 手のひら。

 親指。

 ロッドを動かすたび、それぞれがグリップやリールシートに触れている。

ちゃ〜坊
「あ……」

みなとじい
「気づいたか?」

 リールシートには、いろいろな形がある。

 締め込む部分が上側にあるもの。

 下側にあるもの。

 リングで固定するもの。

 グリップと一体になっているもの。

 使われている素材も、樹脂や金属などさまざまだ。

 でも大切なのは、名前を全部覚えることじゃない。

みなとじい
「もし、何時間も同じ動きを繰り返す釣りだったら?」

ちゃ〜坊
「手に当たるところが痛くなるかも」

みなとじい
「そうだな」

ちゃ〜坊
「握るたびにナットに触ってたら……」

みなとじい
「緩む原因になることもある」

ちゃ〜坊
「なるほど〜」

 たとえば、ロッドを繰り返し動かす釣り。

 親指を添えてロッドを操作するなら、その親指がどこに当たるのか。

 締め込むナットやネジの部分にずっと当たり続けるのか。

 それとも、握りやすいグリップに当たるのか。

 ほんの小さな違い。

 でも、一日使えば大きな違いになることがある。

ちゃ〜坊
「リールシートなんて、今まで見たことなかった」

みなとじい
「見てただろ?」

ちゃ〜坊
「え?」

みなとじい
「毎回リール付けてたんだから」

ちゃ〜坊
「…………」

みなとじい
「見えてたけど、見てなかったんだよ」

 ちゃ〜坊が自分のロッドを見る。

ちゃ〜坊
「なんか、そういうの多いね。釣りって」

みなとじい
「海でも同じだぞ」

ちゃ〜坊
「え?」

みなとじい
「見えてるものを、ちゃんと見る」

 ちゃ〜坊が、もう一度リールシートを眺める。

ちゃ〜坊
「こっちから締めるのと、こっちから締めるのがある……」

みなとじい
「アップロックとダウンロックだな」

ちゃ〜坊
「形が違うのにも、ちゃんと理由があるんだ」

みなとじい
「使い方を考えて作られてるものも多いからな」

ちゃ〜坊
「じゃあ、こっちのほうがいい!」

みなとじい
「なんで?」

ちゃ〜坊
「…………」

みなとじい
「なんで?」

ちゃ〜坊
「…………カッコいいから!」

みなとじい
「それも立派な理由だ(^^)」

ちゃ〜坊
「いいの!?」

みなとじい
「自分で分かって選んだならな」




戻る